相撲ファンから見れば「美声で土俵を彩る粋な裏方」という評判が定着していますが、その私生活は完全に大相撲の共同体に組み込まれています。すべての呼出はいずれかの相撲部屋に所属しなければならず、協会に直接雇用されつつも、日常生活は力士たちと寝食を共にします。
朝稽古が始まれば、呼出は稽古場の土俵を掃き清め、親方や力士のために水やタオルを用意します。ちゃんこ番などの部屋の雑務を分担することも珍しくありません。相撲部屋の人間関係は極めて濃密であり、力士と同じ釜の飯を食うことで、力士が土俵上で何を求めているか、どのタイミングで塩やタオルを差し出すべきかを阿吽(あうん)の呼吸で察知できるようになるといいます。
インターネット上の相撲コミュニティやSNSでは、「あの呼出の美声は聞き惚れる」「扇子の広げ方に独特の色気がある」といった技術面への称賛とともに、いわゆる「推し呼出」を見つけて応援するファン層が拡大しています。一方で現場の裏話として語られるのは、太鼓のミスに対する強烈なプレッシャーです。あるベテラン呼出は専門誌のインタビューで次のように語っています。
「はね太鼓の撥を落としたり、リズムが狂ったりすれば、館内中に響き渡る。土俵作りで腰を痛めても、本番では涼しい顔で立っていなければならない。どれだけ肉体が悲鳴を上げていても、観客にそれを悟らせたら呼出失格です」
華美なパフォーマンスを排し、黒子に徹しながらも一挙手一投足に美学を宿らせる姿勢こそが、長年にわたりファンの心を掴んで離さない理由です。