スペクトルとしての虹は、本来無段階の波長グラデーションであり、境界線はありません。それにもかかわらず、なぜ世界中で「7色」という区分が広く知れ渡ったのでしょうか。
ニュートンが「7色」と定めた音楽的・神秘的背景
17世紀の物理学者アイザック・ニュートン(Isaac Newton)は、プリズムを用いた実験で太陽光が複数の色に分かれることを突き止め、著書『光学(Opticks)』(1704年刊行)を発表しました。しかし、ニュートンが最初に実験室で光を分けた際、彼自身の目には当初5色(赤・黄・緑・青・紫)に見えていたと記録されています。
それをあえて「7色」へと修正した理由は、当時のヨーロッパにおける「音楽と自然科学の調和」という思想にありました。西洋音楽の基本である音階「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の7音と、惑星の数や曜日の数にも通じる神聖な数字「7」に光の現象を一致させるため、オレンジ(橙)とインディゴ(藍)を加え、7色のスペクトルとして体系化したのです。
虹の色 6色の国アメリカと世界の色彩認識
ニュートンが設定した「藍色(Indigo)」は、現代の日常感覚では青と紫の中間色であり、明確に区別することが難しい色です。そのため、現代のアメリカ合衆国をはじめとする多くの英語圏では「虹は6色(Red, Orange, Yellow, Green, Blue, Purple)」と教える教育課程が主流となっています。
さらに世界各国を見渡すと、言語や文化による色彩カテゴリー(言語相対性)の違いにより、虹の色の数は多種多様です。
- 8色:アフリカの一部の部族(暗い色や特定の茶褐色系を細かく分類)
- 7色:日本、韓国、イギリス、オランダ、イタリアなど
- 6色:アメリカ、カナダ、フランスなど
- 5色:ドイツ、中国、ロシア、メキシコなど
- 4色・3色:東南アジアやオセアニアの一部の島嶼部族
- 2色:アフリカのバサ語話者など(「明るい色」「暗い色」の2系統で分類)
物理的な光の波長は地球上どこでも同一ですが、「何色に見えるか」は人間が持つ言語や文化的背景によって切り分けられているという点は、極めて示唆に富む事実です。