時計の針を巻き戻すと、異変が起きたのは2017年11月11日のことでした。岩間沈下橋の中央付近に位置する第8橋脚が、突如として川底へ約1.2メートルも沈下。路面がまるでへし折られたようにV字型に陥没し、即時全面通行止めという緊急事態に陥ったのです。死傷者が出なかったことは不幸中の幸いでしたが、地元西土佐地区の住民にとって唯一無二の生活道路であり、四万十観光の顔であった橋の喪失は甚大なショックを与えました。
四万十市や専門家による現地調査で判明した橋脚沈下の主原因は、長年の出水による「河床の局所洗掘(せんくつ)」でした。1966年(昭和41年)の架橋から半世紀以上が経過するなか、幾度となく押し寄せた台風の濁流が橋脚の基礎周囲の砂利や岩盤を徐々に削り取り、支えを失った橋脚が耐えきれずに自重と水圧で沈下したのです。
撤去して近代的な高架橋を造るべきか、それとも原風景を残すべきか——。激しい議論が交わされるなか、地元住民の強い存続要望や全国から寄せられた熱い支援の声が後押しとなりました。四万十市はふるさと納税や国の補助金を結集し、総事業費約4億円を投じた再生プロジェクトを始動。強固な鋼管杭を岩盤深くまで打ち込んで基礎を一新し、沈下した桁をジャッキアップして修復する難工事が進められました。
そして2021年4月28日、約3年半の工期を経て待望の通行再開を迎えました。開通式典で地元の子どもたちが真新しい橋を笑顔で渡り初めした様子は、過疎化が進む地方インフラ維持の希望の光として広く報道されました。