レコード大賞の話題になると、必ずと言ってよいほど取り沙汰されるのが「出来レース疑惑」と「有力アーティストによる辞退」です。これらは単なるネット上の陰謀論なのか、それとも客観的な事実に基づいた構造的問題なのでしょうか。
疑惑に火をつけた決定打は、2016年に週刊文春が報じた「レコード大賞1億円買収疑惑」でした。大賞選考に関する金銭授受疑惑が世間に強い不信感を植え付け、審査プロセスの不透明性に批判が集中しました。この騒動以降、日本作曲家協会およびTBSは審査規定の厳格化や審査員の再編を進めたものの、長年培われた「業界の力学」に対する大衆の疑念を完全に払拭するには至っていません。
一方で、選考を巡るもうひとつの大きな要素が「辞退の歴史」です。最も知られているのは旧ジャニーズ事務所による長年の辞退方針でしょう。1990年、演歌部門とポップス・ロック部門に分かれていた時代、忍者というグループが「ロック・ポップス部門」の新人賞にノミネートされた際、演歌歌手としての側面も持っていたことから「部門分けが不自然である」「所属タレント同士に順位をつけて競わせることは本意ではない」として辞退を表明。これを契機に、同事務所は2020年代に体制が一新されるまでの約30年間にわたり、原則としてレコード大賞へのノミネートを辞退し続けました。
さらに、宇多田ヒカルやBUMP OF CHICKEN、スピッツといった自作自演型のアーティストたちも、音楽に対する評価をコンテスト形式で格付けされることに疑義を呈し、賞レースへの参加を固辞してきた経緯があります。「音楽は大衆が自由に聴いて受け止めるものであり、審査員が優劣を決めるものではない」という彼らのスタンスは、賞の権威主義に疑問を抱く多くの音楽リスナーから熱い支持を集めました。