インターネット上の言説では「スマホの見過ぎや近視の悪化で誰でも出目になる」「骨気(コルギ)やマッサージで奥目を治せる」といった情報が散見されますが、これらには解剖学的な誤解が含まれています。
眼球の位置関係を決定づける最大の要因は、先天的な頭蓋骨の形状遺伝です。ただし、後天的な要因が全くないわけではありません。代表的な医学的理由として知られるのが「軸性近視」の進行です。眼球の奥行き(眼軸長)は通常約24mmですが、強度近視が進行すると眼軸が前後に伸び、結果として眼球がわずかに前方に押し出されたように見えるケースが実在します。また、成人の眼球突出において最も警戒すべき病理学的要因は「バセドウ病(甲状腺眼症)」です。甲状腺機能の異常に伴い眼窩内の脂肪や外眼筋が炎症を起こして肥大化し、両目または片目が急激に前方へ突出してくる症状であり、これは美容ではなく内科・眼科での早期治療が必須となります。
一方で、加齢による「奥目化」も盲点の一つです。年齢を重ねると眼窩脂肪が萎縮・減少するため、若い頃は適度な立体感だった目元が窪み、影が濃くなることで奥目傾向が強まる生理現象があります。巷で行われている強いフェイシャルマッサージやまぶたの指圧は、デリケートな眼球周囲の靭帯を痛め、眼瞼下垂を悪化させるリスクがあるため極めて慎重な判断が求められます。