楽曲のタイトルである「me me she」のカタカナ表記における読み方は、「メメシー」です。英語の発音記号に厳密に従えば「ミー・ミー・シー」と読みたくなるところですが、本作において野田洋次郎が意図した音の響きは、日本語の形容詞である「女々しい(めめしい)」そのものにあります。
別れた恋人を忘れられず、部屋の片隅で過去の思い出に縋り付いてしまう男の情けなさや未練。日本社会において長らく否定的な文脈で語られがちだった「女々しさ」という感情を、野田洋次郎は巧妙なローマ字・英語の言葉遊びへと昇華させました。
さらに深くタイトルを分解すると、英語の文法・意味論としての仕掛けが浮き彫りになります。
- me(僕):自分自身の内省と自意識
- me(僕):繰り返される自己への執着と後悔
- she(彼女):手の届かない場所へ去ってしまった存在
「僕(me)」がどれだけ重なっても、最後には「彼女(she)」という他者が立ちはだかり、決して一つには戻れないという決定的な距離感。自分本位な未練を断ち切れない「女々しい男の告白」でありながら、構造的に「私と彼女の断絶」をタイトル単体で提示している点に、作詞家としての卓越した才気が宿っています。