オーストリアからわずか14歳で嫁ぎ、ルイ16世の妃となったマリー・アントワネット。彼女が足を踏み入れたヴェルサイユ宮殿は、美しさがそのまま権威を意味する苛烈な社会だった。
ブルボン朝の末期、宮廷の女性たちはコルセットでウエストを極限まで締め上げ、胸元を強調するドレスを身にまとった。王妃の豊かなシルエットと圧倒的なファッションセンスは、ヴェルサイユのトレンドセッターとして宮廷人を魅了する一方、反王室派からは格好の攻撃対象とされたのだ。
やがて迫りくるフランス革命の足音とともに、地下で出回る風刺画や中傷文書(リベル)は王妃の身体的魅力や私生活を猥雑に歪曲して描き立てた。美の象徴であった彼女の身体は、政治的憎悪の標的へと変貌を遂げていくこととなる。