「バイバイン」の物語は、ひとつの栗まんじゅうを惜しんで「食べても減らないようにできないか」と考えたのび太のささやかな欲望から幕を開けます。ドラえもんが取り出したひみつ道具「バイバイン」は、液体を1滴ふりかけるだけで、対象の物体が5分ごとに2倍に分裂・増殖し続けるという驚異的な薬液でした。
ドラえもんは「絶対に食べ残してはダメだ」と厳重に警告していましたが、のび太は増え続ける栗まんじゅうを食べきれず、残ったものをゴミ箱に隠してしまいます。異変に気づいたドラえもんが血相を変えて放った「地球が栗まんじゅうで埋まってしまう!」という叫びは、読者に強烈な危機感を植え付けました。
事態が制御不能に陥ったドラえもんが最終手段として選択したのが、小型の宇宙船(ロケット)に栗まんじゅうを載せ、宇宙の彼方へ投棄するという幕切れでした。裏庭から打ち上げられ、漆黒の宇宙空間へと消えていくロケットを見送るのび太とドラえもんの後ろ姿。問題の根本的な解決を放棄し、果てしない宇宙へ先送りしたラストシーンは、子ども向け漫画の枠を超えた底知れぬ恐怖を残しました。