タイル張り外壁を語る上で絶対に避けて通れない構造的テーマが、タイルの「浮き」と「剥落」のリスクです。これらは施工方法によって発生メカニズムが大きく異なります。戸建住宅で用いられる工法には、伝統的な「湿式(しっしき)工法」と、現代の主流である「乾式(かんしき)工法」の2種類が存在します。
乾式工法と湿式工法のリスクの違いを整理すると、湿式工法は現場で下地モルタルを塗り、その上にモルタルを使ってタイルを1枚ずつ圧着していく工法です。職人の手仕事の味わいが出る反面、職人の腕前やその日の天候・湿度によって仕上がりにムラが出やすいという致命的な弱点があります。乾燥収縮や経年劣化によって下地モルタルとタイルの接着面が剥がれやすく、築15〜20年を超えた建物でタイルがゴソッと広範囲に落下する事故の大半は、この湿式モルタル工法で起きています。
一方、2000年代以降の木造住宅で標準となった乾式工法は、専用のサイディング下地(ベースサイディング)を留め付け、その上に弾性変形に強い変成シリコーン系などの接着剤を用いてタイルを引っ掛け張りする方法です。地震の揺れにも下地と接着剤が柔軟に追従するため、剥落リスクは湿式に比べて劇的に低減しました。
しかし、乾式工法であってもリスクがゼロになったわけではありません。施工時の接着剤の塗布量不足や硬化前の雨水接触、直射日光による急速な温度上昇による接着不良があれば、内部で浮きが生じます。外壁タイルの健全性を確かめるためには定期的な調査が欠かせず、打診棒で叩いて音を聞き分ける打診調査や、熱画像で温度差を可視化する赤外線サーモグラフィ調査が行われます。この外壁タイルの浮きの点検費用だけでも、戸建住宅で5万〜15万円(足場を組む場合は別途足場代)が必要となります。
万が一浮きやひび割れが発見された場合、外壁タイルの剥離補修費用は部分的な張り替えやエポキシ樹脂注入工法で1㎡あたり2万〜5万円前後の工事費がかかります。数枚の張り替えであっても高所であれば足場を組む必要があり、トータルで30万〜50万円以上の修繕費に膨れ上がるケースも珍しくありません。廃番になった同じ品番のタイルが手に入らず、補修箇所だけ色が異なってツギハギのような外観になってしまう点も、現場で施主が直面する深刻なデメリットの一つです。