「世田谷ラブストーリー」がこれほどまでに聴き手の胸を打つ最大の理由は、フィクションの枠を超えた清水依与吏の実体験・実話に基づくリアリティにあります。
当時の音楽雑誌インタビューやラジオ番組において、清水依与吏本人は上京後の下積み時代、世田谷近辺に住んでいた頃の記憶や心情が色濃く反映されていることを明かしています。群馬から上京し、都会のスピード感や独特の距離感に戸惑いながら過ごした日々の中で、好意を寄せる女性を駅まで送っていった実体験が曲の原型となっています。
清水依与吏が描く主人公像は、決してスマートなヒーローではありません。「カッコつけたいけれど勇気が出ない」「嫌われるのが怖くて踏み込めない」という、男性が心の奥底に抱える情けなさや弱さ(通称・ヘタレ男子の美学)を一切美化せずに曝け出すからこそ、嘘のない説得力が宿るのです。