なぜ死刑も?現住建造物等放火罪の重罪理由と未遂・執行猶予の境界線とはどんな影響があるのか? 専門的な分析を丁寧に紐解いて紹介します。
火を放つ対象や状況によって、成立する犯罪と科される刑罰には天と地ほどの格差が生じます。日常用語ではひと括りに「放火」と呼ばれますが、刑事法上は「現住性」の有無や所有関係によって厳格に区別されています。
項目詳細・数値データ一般的な基準・相場編集部の見解・評価現住建造物等放火罪
(刑法108条)死刑・無期・5年以上の懲役
裁判員裁判の対象事案求刑:懲役7年〜10年前後
実刑判決率:90%以上殺人未遂と同格以上の厳罰。死者が出た場合は無期懲役や死刑の現実味が直ちに浮上する。非現住建造物等放火罪
(他人所有・刑法109条1項)2年以上の有期懲役
(上限は原則20年)懲役2年〜4年前後
初犯なら執行猶予の余地あり空き家や無人の倉庫が対象。生命の直接危機がない分、下限が2年に引き下げられている。自己所有非現住建造物等放火
(刑法109条2項)6月以上7年以下の懲役
(公共の危険が生じた場合)懲役1年〜2年前後
執行猶予付き判決が主流自分の空き家を燃やす行為。ただし「他人に延焼する危険」が生じなければ罪にならない。殺人罪
(刑法199条)死刑・無期・5年以上の懲役
裁判員裁判の対象事案求刑:懲役10年〜18年前後
(被害者1人の単独殺害時)放火罪はこの重刑と同じ枠組みに置かれており、生命侵害に対する法の警戒レベルの高さを示す。
ここで最大の焦点となるのが「現住性」の判断基準です。最高裁判所の判例上、現住性とは「犯人以外の者が現に起居・就寝などの日常起居のために使用していること(住居性)」、または「犯行時に犯人以外の者が実際に建造物内に存在すること(現在性)」を指します。
実務で多くの被告人が陥る落とし穴が、「誰もいない時間帯を狙って火をつけたから非現住だろう」という弁解です。被害者が買い物で一時的に留守にしていたとしても、そこが生活の拠点である限り「住居に使用している」とみなされ、現住建造物等放火罪が成立します。さらに、アパートやマンションのような集合住宅においては、たとえ火を放ったのが自分の部屋(無人)であっても、廊下や壁で物理的・機能的に一体化している別の部屋に他人が住んでいれば、建物全体が一つの現住建造物と判断されるのが確立された判例法理です。