『ぞうさんのぼうし』(作:神沢利子、絵:佐々木マキ/福音館書店)は、森に置き忘れられた大きな象の帽子を舞台に繰り広げられる心温まる物語です。独特のタッチと鮮やかな色彩で描かれるユーモラスなイラストは、刊行以来、多くの子どもたちを魅了し続けています。
絵本のあらすじは極めて明快です。象が木の下に忘れていった大きな麦わら帽子を最初に見つけたのは子ぶたでした。「こぶたが はいって ポン!」と帽子に入ると、続いてたぬき、きつね、ねこといった登場キャラクターたちが次々とやってきます。「ぼくもいれて」「いいよ」という温かいやり取りとともに、帽子の中はぎゅうぎゅう詰めになっていきます。
この物語の真骨頂は、トラブルや排他性が一切描かれない点にあります。見知らぬ他者を受け入れ、限られた空間を分け合うという利他性と受容の精神が、リズミカルなオノマトペ(擬音語・擬態語)とともに自然に刷り込まれていく構成になっています。