本作を一言で定義することは極めて困難だ。表向きは、付き合って2週間で交通事故死した少年・青野龍平と、彼を追って自殺を図ろうとした女子高生・刈谷優里の純愛ラブストーリーの骨格を持つ。しかし、その甘美な追憶は即座に裏切られる。
優里の前に現れた青野の霊は、生前の優しさを残した「白青野」だけではなかった。時折顔を覗かせる、黒く塗りつぶされた悪意の塊「黒青野」。それは優里の身体を乗っ取り、周囲の人間に危害を加え、精神を根底から解体しようとする。恋愛の陶酔感と、逃げ場のないサイコホラーの戦慄。この二極が一切の緩和材なしに同居する歪な構成こそが、読者を底知れぬ不安へと突き落とす。
愛することは相手と同化することなのか、それとも相手の異物性を受け入れることなのか。優里が抱える自己否定感と共依存の病理は、黒青野という怪異を通じて残酷なまでに視覚化されていく。