インターネットの検索窓やSNS上で長年囁かれ続けているのが、「ハーベスター八雲=ケンタッキー発祥の地」という言説です。当然ながら、ケンタッキーフライドチキン(KFC)のブランド発祥の地はアメリカ合衆国ケンタッキー州コービンであり、八雲町でカーネル・サンダースが創業したわけではありません。それにもかかわらず、なぜこのような噂が定着したのか、そこには日本の外食産業史に刻まれるべき情熱的な誕生の歴史と経緯が存在します。
時計の針を1988年に戻すと、当時急成長を遂げていた日本ケンタッキー・フライド・チキン(日本KFC)は、急速に高まる消費者の健康志向や食の安全性に応えるため、自社で理想的な鶏肉や有機野菜を試験栽培・飼育する研究拠点を模索していました。そこで白羽の矢が立ったのが、冷涼な気候と豊かな大地、清らかな水に恵まれた八雲町でした。創業者精神を受け継ぐ当時の経営陣や技術者たちがこの地に設立した施設こそが、前身となる「日本KFC実験農場」です。
実験農場では、肉特有の臭みを抑え、肉質を極限まで柔らかくするためにハーブを飼料に配合した「ハーブ鶏」の飼育試験や、無農薬野菜の栽培が徹底して行われました。その後、1990年代に入って「自分たちが丹精込めて育てた本物の食材を、生産の現場である丘の上で直接味わってほしい」という現場技術者の強い想いから、一般開放型のファームレストランとして「ハーベスター八雲」が開業しました。現在は経営母体が独立した形をとっているものの、日本KFCの品質追求の原点という誇り高きDNAがそのまま受け継がれている事実こそが、「発祥の地」と語り継がれる噂の正体です。