昭和初期の面影を色濃く残す唐破風(からはふ)の玄関。今回の改修プロジェクトで最も関係者を驚かせたのは、釘を一本も使わずに組み上げられた壮麗な宮造り建築の躯体を完全に保存しながら、内部に最新鋭のフィンランド式薪サウナを組み込むという前代未聞の設計だ。老朽化したボイラー室は、木質バイオマスと地下水を掛け合わせた超高効率な温水循環システムへと刷新された。
浴場の中央にそびえる富士山のペンキ絵も、気鋭の絵師によって鮮烈に塗り直された。湯口から注がれるのは、地下120メートルから汲み上げた軟水だ。水風呂には深さ1.2メートルの潜水可能な冷却槽が新設され、外気浴スペースには職人が手掛けた竹網のデッキチェアが並ぶ。歴史の重みとモダンな機能美が、計算し尽くされたバランスで同居している。