言葉の成り立ちを知れば納得できるものの、現実の会話では正反対の解釈が驚くほどの割合で定着しています。文化庁の「国語に関する世論調査」における調査結果を見ても、その混乱ぶりは一目瞭然です。
同調査において「気が置けない」の意味を尋ねたところ、本来の「相手に対して気配りや遠慮をしなくてよい」と正しく回答した人は約4割にとどまりました。これに対し、「相手に対して気配りや遠慮をしなくてはならない」という正反対の意味を選んだ人が約5割弱に達しています。各種メディアが発表する「慣用句の誤用ランキング」でも常に上位へ顔を出す常連組です。
これほどまでに気のおける人の誤用が広まった背景には、「置けない=(心を)許してはいけない、信用がおけない」という連想が働きやすい言語心理があります。「油断が置けない」という別の表現との混同も手伝い、否定形である「気のおけない」のほうが警戒を意味するように錯覚してしまうのです。言葉は生き物とはいえ、公の場で使う際には細心の注意が求められます。