テレビ番組のタイアップ曲は、既存のストック曲や大まかなあらすじだけで制作されるケースも少なくありません。しかし「逢いたくていま」の誕生プロセスは極めて異例でした。番組プロデューサーの石丸彰彦氏からオファーを受けたMISIAは、原作者・村上もとか氏による長編漫画『JIN-仁-』を全巻読破。さらに江戸時代の医療現場や歴史を体感するため、資料館やゆかりの史跡へ自ら足を運んだと当時の音楽特番やインタビューで明かしています。
MISIAが制作時に突き詰めたのは、「150年という時空の隔たりによって、二度と会えなくなってしまった人への感情とはどのようなものか」という極限の命題でした。作詞作業において彼女は、生と死、過去と未来という絶対的な断絶に直面したとき、人間が最後に抱く純粋な感情を掘り下げていきました。
その結果生まれたのが、「運命が変えられなくても 伝えたい言葉がある」「今 逢いたい あなたに 逢いたい」という、痛切なまでのストレートなフレーズです。普段の生活の中では当たり前に交わされる「ありがとう」や「ごめんね」といった日常の言葉が、二度と伝えられない状況に置かれたとき、どれほど尊く切実なものになるのか――。南方仁が現代に残してきた恋人・未来への思慕、そして幕末で育まれる橘咲との決して結ばれることのない淡い愛情の行方が、一語一語に克明に刻み込まれたのです。