本作を語る上で欠かせないのが、アニメーション史に残る超豪華声優陣のキャスティングと、彼らが現場で繰り広げた圧倒的な演技の応酬です。メインキャストには神谷浩史、戸松遥、梶裕貴、阿澄佳奈、鈴村健一、豊崎愛生、代永翼といった主役級の表現者が一堂に会し、思春期特有の「声の震え」や「間(ま)」のリアリティを極限まで追求しました。
当時の劇場パンフレットや特別番組のインタビュー記録によると、瀬戸口優役の神谷浩史は「夏樹の前で見せる頼れる幼馴染の顔と、一人になった瞬間にこぼれ落ちる独占欲や弱さのバランス」を極めて緻密に計算して演じたと明かしています。優は単なるクール系イケメンではなく、心の中では夏樹を誰にも渡したくないと叫んでいる等身大の男子高校生です。その二面性を、声のトーンの微細な明暗で描き分けた神谷の芝居は圧巻の一言に尽きます。
一方、榎本夏樹を演じた戸松遥は、天真爛漫なボーイッシュさと乙女心のグラデーションを熱演。アフレコ現場では、梶裕貴演じる望月蒼太(もちた)の純情すぎる挙動や、鈴村健一演じる芹沢春輝の飄々とした優しさが絶妙な空気感を作り出し、キャスト陣の間でも「高校時代にタイムスリップしたかのような甘酸っぱい疲労感があった」と語り草になっています。妥協なき演技プランの衝突が、セル画のキャラクターたちに生々しい血肉を通わせた事実は間違いありません。