『かぐや姫の物語』帝のあごはなぜ鋭い?高畑勲が仕掛けた作画の真相

『かぐや姫の物語』帝のあごはなぜ鋭い?高畑勲が仕掛けた作画の真相

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では、あの極端にあごが強調されたデザインは単なる悪ふざけや作画の揺らぎなのだろうか。結論から言えば、それは高畑勲監督と人物設計を担当した田辺修による、極めて計算し尽くされた高度な演出意図の産物である。

高畑監督が目指したのは、見た目の男前さではなく「絶対権力者の歪んだ自尊心」と「無自覚な滑稽さ」の視覚的表現だった。帝は生まれながらにして頂点に君臨し、すべての女性が自分に恋焦がれると疑わない自信家として描かれている。かぐや姫を背後から抱きすくめる有名なシーンにおいて、顎を突き出し、上から目線で言い寄る彼の所作は、彼女が抱く生理的な拒絶感や恐怖心をそのまま画面に投影したものだ。

カメラのパースペクティブ(遠近感)を意図的に歪め、かぐや姫の主観的な「居心地の悪さ」や帝の肥大化したエゴを強調した結果、あの極端に鋭い顎のフォルムが誕生した。つまり、あれは単なる物理的な造形ではなく、人間の内面を炙り出す心理的リアリズムの表現なのだ。

木村 陽翔
著者

木村 陽翔

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。