入手した精肉を調理する際、絶対にやってはならないのが「水道の真水でジャブジャブ洗うこと」です。浸透圧の低い真水に肉をさらすと、細胞膜が破れて旨味成分が流出するだけでなく、筋繊維が水分を吸って膨張し、内部に臭み物質が閉じ込められてしまいます。
プロの現場で最初に行われる基本動作が、生理食塩水に近い濃度を活用したイノシシ肉塩水処理です。この工程を経ることで、肉質を損なわずに毛細血管内の凝固しかけた血液を効率的に誘出できます。
家庭で確実な成果を出すためのイノシシ肉血抜きやり方は以下の手順で進行します。
まず、ボウルに氷水を張り、水1リットルに対して食塩20〜30g(濃度2〜3%)を完全に溶かします。水温は雑菌の繁殖と脂の融解を防ぐため、必ず5℃以下の冷水環境を維持してください。そこにブロック状またはスライスしたイノシシ肉を投入し、静かに浸します。
浸漬時間は、スライス肉であれば20〜30分程度、500g前後のブロック肉であれば1〜2時間が目安です。水が薄い赤色に濁ってきたら血が抜けている証拠です。濁りが強い場合は途中で新たな冷塩水に取り替えます。引き上げた後は流水で素早く表面を流し、何重にも重ねた厚手のキッチンペーパーで水分を徹底的に吸い取ります。この「水気の完全除去」を怠ると、加熱時に生臭みが蒸気とともに立ち上ってしまうため細心の注意を払ってください。
水分を拭き取った後は、白く濁った筋膜(シルバータスク)や黄色く変色した外皮脂を取り除くジビエ肉の下ごしらえのコツを実践します。筋膜は加熱によって激しく収縮して肉を固く縮こまらせるため、包丁の刃先を皮下へ滑らせるようにして削ぎ落とすことが仕上がりを左右します。