尺貫法が強固に受け継がれているもう一つの代表的なフィールドが「へら鮒(へらぶな)釣り」です。へら竿は現在でも尺単位で製品化されており、7尺から始まり、8尺、9尺、10尺……と1尺刻みでラインナップされています。
へら竿9尺長さ(約2.72m)は、数あるレングスの中でも「最も汎用性が高く、扱いやすい黄金サイズ」として初心者からトーナメンターまで幅広く愛用されています。管理釣り場(釣り堀)の規定水深(多くは1m〜3m)に対して、浅ダナ(規定ギリギリの浅いタナ)を狙うチョーチン釣りから、底釣りまで臨機応変に対応できる取り回しの良さが特徴です。
釣り業界関係者の証言によると、「リールを使わないノベ竿の世界では、仕掛けの振り込み、魚とのやり取り、タモ網への取り込みにおいて、竿の長さと腕の可動域の比率がミリ単位ではなく『人間の身体尺』である尺単位に完全に最適化されている」と語られています。単なる懐古趣味ではなく、身体感覚と力学的な合理性が一致しているからこそ、令和の最新カーボンロッドであっても「9尺」という表記が冠され続けています。