ネット上の簡易的な解説記事などでは、「GSブームが去って売れなくなったため、流行っていた演歌に安易に鞍替えした」といった皮相的な見解が散見されます。しかし、これは歌謡史の実態を見誤った大きな誤解です。
実際には、GSブーム終焉後の歌手たちの多くは、テレビタレントへの転向や音楽界からの引退を余儀なくされました。当時、ロックやポップスの発声法を徹底的に叩き込まれたボーカリストが、演歌特有の節回しや日本の伝統的な情感表現を身につけることは、技術的にもプライドの面でも極めて高いハードルが存在したのです。
真木ひでとは、師匠である鈴木淳氏のもとで徹底的なボイストレーニングを重ね、喉の使い方をゼロから作り直しました。過激なパフォーマンスという外的な刺激に頼るのではなく、「声そのものの説得力で聴き手を酔わせる」という本物のボーカリストへの昇華があったからこそ、「雨の東京」という名曲が結実したといえます。