かつて背番号10といえば、守備の義務を免除され、前線で自由にタクトを振る「クラシカル・ファンタジスタ」の指定席だった。しかし、近年のフットボール戦術論の劇的な進化によって、その立ち位置は根本的な変革を迫られている。ハイプレスと即時奪回が常識となったピッチにおいて、走らない司令塔の居場所は完全に消失した。
現代の10番に求められるのは、卓越したひらめきだけではない。プレッシャー耐性、90分間強度の落ちないスプリント力、そして守備ブロックを破壊するポジショニングの知性だ。インサイドハーフとして広範囲をカバーしながら決定機を演出する者、あるいはウイングから鋭くカットインしてゴールを陥れる者。表現の形態は多様化したが、核にある本質は変わらない。極限のプレッシャー下で「違い」を作れるかどうか。それだけが、いま10番を名乗るための絶対条件となっている。