この混乱の中心人物として浮上しているのが、長年にわたり舵取りを担ってきた佐伯和彦氏だ。彼の決断力と強力なリーダーシップは、経営危機に瀕していた同社を何度も救ってきた実績がある。しかし、今回のプロジェクトにおいては、そのワンマン体質が裏目に出た形となった。特に注目されているのが、民間向け船舶の製造から防衛産業領域への急速なシフトである。
緊迫するアジア太平洋の安全保障環境を背景に、防衛省向け特殊艦艇の受注獲得は、企業にとって喉から手が出るほど欲しい安定収益源であった。佐伯和彦氏は水面下で政府関係者と交渉を重ね、自社の最新技術を防衛装備品へ転用するルートを開拓。しかし、その強引な手法は社内の技術者層から激しい反発を招き、組織内に修復不可能な亀裂を生み出すこととなった。