2005年、スタジオジブリの宮崎駿監督は約2ヶ月間にわたり鞆の浦に滞在し、地元の人々と暮らしを共にしながら構想を練り上げた。その滞在劇から生まれた作品こそが、世界中で愛される名作『崖の上のポニョ』である。海に面した断崖や、坂道の先に見え隠れする赤瓦の民家など、映画のワンシーンを彷彿とさせる景色が街の至る所に現れる。
作品のファンにとって、ここは単なる観光地ではなく特別な聖地だ。アニメ聖地巡礼を楽しむ人々がカメラを手に路地を巡り、劇中の描写と現実の風景を重ね合わせる光景は日常のひとコマとなった。宮崎監督が愛したとされる古い喫茶店や、港を行き交う船の姿には、今なお創作の源泉となった温かな温もりが宿っている。