古都の風情が色濃く残る京都府京都市東山区。この地で明治38年の創業から続く老舗の手作りバッグブランドが、激震に見舞われたのは21世紀初頭のことだった。丈夫な綿帆布を用い、職人が一つひとつ縫い上げる帆布鞄は、使い込むほどに味わいを増す伝統工芸品として全国に根強いファンを持つ。長年にわたり経営を実質的に支えていたのは、社屋現場で陣頭指揮を執る三男の一澤信三郎氏であった。
しかし、2001年に前社長の父親が他界したことで事態は一変する。東京で大手銀行員として勤めていた長男の一澤信太郎氏が突然、自らを筆頭株主とする「遺言書」を携えて登場したのだ。実質的な現場を仕切ってきた信三郎氏らを経営から締め出す形となったこの動きは、典型的な家族間の相続トラブルとして大きく報じられ、歴史ある老舗を巻き込んだ泥沼のお家騒動へと発展していく。