『リメンバー・ミー』の脚本は、ピクサー作品の中でも群を抜いて緻密な伏線回収が施されています。初見では見落としがちな細部の描写が、真相を知った後にすべて意味を持つ構成は圧巻です。
代表的な伏線が「祭壇の写真の破片」と「特徴的なギター」です。リヴェラ家の祭壇に飾られたイメルダと幼いココの写真では、父親の顔の部分が無残に破り取られていました。しかし、その人物が抱えていた白と黒のギターのヘッド部分には、特徴的な「金歯のガイコツ」の意匠が施されていました。ミゲルはこのギターを見て「持ち主はデラクルスだ」と早合点しますが、実はその金歯こそがヘクターのトレードマークであり、真の持ち主を示す決定打だったのです。
さらに、生前のデラクルスが出演していた白黒映画の劇中劇にも巧妙な罠が仕掛けられていました。映画内でデラクルスが演じる主人公は、悪徳な相棒から「乾杯の毒入り酒」を勧められて難を逃れます。このセリフと乾杯の仕草は、まさにデラクルス自身がかつてヘクターを毒殺した現場で口にした言葉そのものでした。自らの犯行手口をフィクションとして映画化し、自らを正義の味方に仕立て上げていたデラクルスの歪んだナルシシズムが、劇中劇のセリフを通じて見事に暴かれます。
楽曲『リメンバー・ミー』の演奏スタイルの違いも重要な伏線でした。デラクルスが歌うそれは大編成のオーケストラを従えた華美な自己アピールのショーソングでしたが、ヘクターがココのために歌った原曲は、幼い娘への惜しみない愛情を込めた静かな「子守唄」でした。同じメロディでありながら、誰に向けて作られたものかが歌い方ひとつで雄弁に物語られていたのです。