ネット上の情報や民間療法、あるいは過信による「誤った対処法」が事態を致命的に悪化させるケースが後を絶ちません。現場の医療従事者が警鐘を鳴らす、3大誤解を解剖します。
最も危険な誤解が、「強い頭痛と吐き気があるから、市販の鎮痛薬や睡眠改善薬を飲んで寝かせる」という対応です。頭蓋内圧亢進による頭痛に対して、市販の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)はほとんど効果を示しません。それどころか、睡眠薬や強い鎮痛薬で患者を深く眠らせてしまうと、呼吸抑制によって動脈血中の二酸化炭素濃度がさらに上昇し、脳血管が拡張して脳圧亢進に拍車をかけます。さらに最悪なのは、「薬が効いて眠っているのか、意識障害が進んで昏睡に陥っているのか」の判別が第三者につかなくなり、救命可能なゴールデンタイムを完全に喪失することです。
次に多いのが、「普段から偏頭痛持ちだからいつもの発作だろう」という正常性バイアスによる見過ごしです。長年片頭痛に悩まされている人ほど、「寝ていれば治る」という経験則に縛られがちです。しかし、突然の「バットで殴られたような痛み」「人生で経験したことのない痛みの性質」「手足の脱力や呂律の回りにくさを伴う頭痛」は、既存の頭痛とは完全に別物です。
また、「激しく吐いていないから頭蓋内圧亢進ではない」という思い込みも危険です。小児や若年層では頭蓋骨の縫合線や組織の弾性により典型的な噴射状嘔吐を呈しやすい一方、脳の萎縮が進んでいる高齢者では頭蓋内に物理的なスペース(余白)が存在するため、圧の上昇が緩慢に進みます。その結果、頭痛や嘔吐が目立たず、「何となく元気がない」「昼間からうとうとしている」「少し歩行がふらつく」といった軽微な変化だけで病態が極限まで進行し、突如クラッシュすることがあります。