事態が動いたのは発生から数年が経過した後のことだ。発見された極めて僅かな骨片や運動靴などの遺留品は、山梨県警察の科学捜査研究所へと持ち込まれた。長期間にわたり雨風や紫外線、野生動物の影響に晒されたDNAの解析は困難を極めたが、警視庁の高度な鑑識技術と科学捜査支援が加わることで、小倉美咲さん本人のものと特定されるに至った。
科学捜査が明かしたのは、単なる身元確認にとどまらない。骨片の損壊状態や周囲の堆積物の分析から、骨や遺留品が流出・移動した自然力学的なメカニズムが徐々に解明された。上流部から土砂とともに流下した可能性や、風化の度合いが示す時間の経過。これらの科学的裏付けは、事件初期になぜ発見できなかったのかという物理的・環境的理由を冷徹に裏付けている。