遠野なぎこさんの家庭環境は、幼い頃から極めて不安定でした。実父と母親の離婚後、母親は次々と交際相手を自宅に招き入れ、家庭内は常に緊張状態に置かれていました。下に妹や弟がいる家族構成の中で、長女である遠野さんは幼少期から幼い兄弟の世話を一手に引き受ける「ヤングケアラー」の役割を強いられます。
母親からの精神的・肉体的攻撃は日常茶飯事でした。公の場や自著で明かされた証言によると、母親は遠野さんに対して「ブス」「生まなければよかった」といった暴言を日常的に浴びせ、気分の浮き沈みによって激しい暴力を振るう毒親そのものでした。さらに母親自身の男性関係の愚痴や性的な悩みの聞き役まで強要されるなど、子どもの心理的バウンダリー(境界線)を完全に破壊する虐待が行われていたのです。
小学時代から子役時代として芸能界へ送り出されたのも、母の強い意向でした。1999年のNHK朝ドラ『すずらん』でヒロイン・萌役を射止め、名実ともに国民的知名度を獲得した若い頃の栄光の裏で、得られたギャランティの多くは母親の遊興費や生活費へと消えていきました。娘を自己実現の道具、あるいは金銭的搾取の対象として支配し続ける母親の存在が、遠野さんの心を深く蝕んでいきました。