「なぜ地上波で全試合が見られなくなったのか」「予選ではなぜテレビ中継が消えたのか」。この疑問を解き明かすには、スポーツビジネス界を揺るがす放映権料のインフレーションを直視しなければなりません。
関係者や広告代理店の試算によると、FIFA(国際サッカー連盟)が提示するW杯放映権料いくらという問いに対し、日本国内向けパッケージは2002年日韓大会の約60億円から、2022年カタール大会では推定350億円規模、そして2026年大会では400億〜500億円規模にまで跳ね上がっています。放映権高騰の理由は、FIFAの収益最大化戦略に加え、北米市場を中心とする巨大テック企業(Apple、Amazonなど)のスポーツコンテンツ争奪戦が相場を世界的に引き上げたことにあります。
かつてNHKと民放各局は「ジャパンコンソーシアム(JC)」を結成して共同で権利を購入していましたが、広告収入が右肩下がりの民放テレビ局にとって数百億円の負担は経営を揺るがすリスクとなりました。この歪みが先鋭化した事例こそが、アジア最終予選地上波なし真相です。最終予選のアウェー戦放映権はAFC(アジアサッカー連盟)と長期大型契約を結んだスポーツ専門配信サービス「DAZN」が独占し、数億円の単発放映権料を民放が回収できないため、テレビ生中継の断念を余儀なくされました。