児童文学作家・安東みきえ氏によって執筆された『星の花が降るころに』は、中学校生活がスタートして間もない時期の「環境の変化と孤独感」を鮮烈に切り取った名作です。小学校時代は無二の親友として何でも分かち合っていた真理子と主人公の「私(夏実)」ですが、中学校に入学すると状況は一変します。
真理子はバレーボール部に所属し、新しいグループの友人たちと楽しげに過ごすようになり、文化部に所属する夏実との間には目に見えない溝が生じ始めます。放課後、かつてのように一緒に帰ることができず、真理子の視線や態度に過剰な寂しさと疎外感を抱える夏実は、校庭の隅にある植え込みのそばで一人、やるせない時間を過ごしていました。
そんな夏実の孤独な日常に小さな波紋を投じるのが、同級生の男子・戸部君の存在です。彼との飾らないやり取りや、ふと気づかされた「銀木犀(ぎんもくせい)」の香りをきっかけに、夏実は固く閉ざしていた心を少しずつ開き、自分が囚われていた過去の思い出と向き合い直すことになります。