キッチンペーパーが食品衛生法に適合しているからといって、あらゆる調理法で無条件に安全が保障されるわけではありません。熱と水分、油分が複合的に作用する調理環境では、材質特性に応じた危険性が潜んでいます。
第1の落とし穴は、「電子レンジ加熱での発火と過熱」です。パルプ100%のペーパーは乾燥状態でマイクロ波が直接当たっても発火しにくいですが、少量の油分を吸った状態で高出力加熱を続けると、局所的に200℃を超える高温(ヒートスポット)が発生し、紙が炭化して発火に至る事故が消防庁等から度々報告されています。電子レンジで野菜を蒸す、下ごしらえに使う場合は、「電子レンジ対応」と明記された不織布タイプを選び、長時間の油物加熱には絶対に使用しない配慮が欠かせません。
第2の盲点は、「煮物の落とし蓋による繊維の溶出」です。煮魚や角煮を作る際、アルミホイルや木蓋の代わりに一般的なロール型キッチンペーパーを被せる光景が見られます。しかし、エンボス加工されたパルプ製の薄手ペーパーは、強火で沸騰し続ける煮汁の中で激しく揺さぶられると、水解性(水にほぐれる性質)により繊維同士の結合が崩れ、煮汁の中に微細な紙パルプが溶け出してしまいます。パルプ自体は食物繊維の一種であるため微量を誤飲しても致命的な毒性はありませんが、料理の風味を著しく損ない、調味料に含まれる塩分や酸によって紙の結合剤成分が抽出されるリスクもあります。落とし蓋には、水に強い不織布製クッキングペーパーを使用するのが鉄則です。
第3は、「揚げ物の油きりにおける放置」です。揚げたての天ぷらや唐揚げをペーパーの上に長時間放置すると、冷める過程で紙が吸い取った酸化油が再び食品側に逆流し、食感を損なうだけでなく過酸化脂質の摂取につながります。油きりを行った後は速やかに網付きバットへ移すことが、衛生面および栄養学的な観点からも合理的です。