人間がカワテブクロの姿を見て笑ったり恥ずかしさを覚えたりする背景には、心理学でいう「パレイドリア(心理的錯覚)」が働いています。脳が未知の視覚情報を処理する際、記憶にある身近な道具や人体のパーツに無理やり当てはめて認識しようとする心理メカニズムです。
しかし、生物学的な視点に立てば、あの肉厚で丸みを帯びたフォルムは「ふざけた形」ではなく、荒波が打ち寄せるサンゴ礁の岩場で身を守るための究極の防御形態に他なりません。細長い腕を持つヒトデに比べて外敵(魚類や大型のカニなど)に噛みちぎられる露出面が少なく、流線型の丸みが強い水流を受け流します。
ネット上のミームとして笑いの対象になる一方で、その実体は何百万年もの淘汰圧をくぐり抜けて完成した機能美の結晶です。奇抜な見た目の奥にある進化の必然性に目を向けることこそ、大人の知的好奇心を満たす最大の醍醐味と言えます。