中村玉緒という女優の骨格を語る上で、昭和を代表する怪優・勝新太郎さんとの結婚生活を切り離すことはできません。1962年の結婚以来、夫が引き起こす数々のスキャンダル、大麻取締法違反による逮捕劇、そして主宰した勝プロダクションの倒産。勝さんが残した負債総額はおよそ14億円(一説には20億円近く)に達していました。
普通の家庭であれば即座に破綻する過酷な状況下で、彼女は夫を責めることなく、自らの労働で借金を背返済する道を選びました。1990年代後半から始まったTBS系『さんまのSUPERからくりTV』への出演は、彼女の運命を劇的に変えました。明石家さんまさんとの絶妙な掛け合いと、予想もつかない天然ボケのリアクションが若い世代に大ヒットし、彼女は「昭和の名門女優」から「国民的お茶の間スター」へと見事な再ブレイクを果たしたのです。
当時のインタビューで彼女は、「主人が残してくれた借金があったからこそ、私は新しい仕事に出会え、多くの皆さんに愛していただけた。お父さんには感謝しかありません」と語っていました。昭和の妻としての従順さと、莫大な借金を背負いきる精神的タフネス。しかし、その過剰なまでの忍耐と家族への過保護な愛が、次の世代の家族関係に暗い影を落とすことになります。