SNSやネット掲示板で毎シーズンのように飛び交う「しまむらのアウターは値段バグが起きている」という評価。この現象の核心にあるしまむらジャケット高見えの理由を探ると、単なるコスト削減ではない綿密な商品設計が見えてきます。繊維商社関係者やパターンメイキングの現場に取材すると、特に2024年から2026年にかけて、しまむらが注力した「3つの構造改革」が浮かび上がってきました。
第1に、異素材の絶妙なブレンド技術です。従来の安価なジャケットに見られた特有のテカリを抑えるため、極細のポリエステル糸にレーヨンや微量のウール調アクリルを混紡し、表面に凹凸感(スラブ感)を持たせる工夫が施されています。これにより、光の反射が分散され、1万円台後半の中堅セレクトショップが扱うファブリックに近い上品なマット感が生まれます。
第2に、ダーツ(立体縫製)の最適化です。吊るし(ハンガー陳列)の段階では平面的に見えるジャケットも、着用した瞬間にウエストラインや肩甲骨の丸みに沿うよう設計されています。特に肩パッドを極力薄くしつつ、裄綿(ゆきわた)で肩先を支えるドロップショルダー仕様やセットインスリーブの改良は、体型を拾いすぎず端正なシルエットを描く立役者となっています。
第3に、しまむら独自の直接貿易と巨大ロット発注によるスケールメリットです。公式決算資料や業界動向レポートが示す通り、しまむらはサプライヤーとの中間マージンを極限まで削ぎ落とし、原価の大部分を「表地のクオリティ」に投じられる体質を確立しています。その結果、他社なら6,000円以上で設定される仕様が、店頭で税込3,000円台前半という驚異的なプライスで陳列されるサイクルが完成しているのです。