ネット上の掲示板やSNSでは、山寺氏がアンパンマンで多くの役を兼任していることに対し、「制作会社がギャラ(出演料)を節約するために山寺さんに何役も押し付けているのではないか?」という憶測が書き込まれることがあります。しかし、声優業界の契約構造と制作実態を照らし合わせると、この説は完全に誤りであることが分かります。
日本俳優連合(日俳連)が定めるアニメーション出演規定では、声優の報酬は原則として「1作品(1本)あたりの拘束・実働に対するランク制」で支払われます。つまり、1話の中でセリフが1行だけでも、主役として100行喋っても、あるいは1人で5役を演じ分けても、基本的な出演料が倍増することはありません。
しかし、だからといって制作陣がコストカット目的で山寺氏に負担を強いているわけではありません。アニメ制作関係者の証言によると、兼役が成立する最大の理由は「現場のタイムスケジュールとクオリティの担保」にあります。
『アンパンマン』のような毎週放送されるテレビシリーズでは、ゲストキャラクターが毎話多数登場します。毎回外部から別の声優を呼ぶと、スタジオ内のマイク本数(通常3〜4本)の奪い合いや立ち位置の調整、スケジューリングの難易度が跳ね上がります。山寺氏のように「スタジオ内の空いているマイクへ瞬時に移動し、別キャラクターの声帯に0.1秒で切り替えてNGを出さずに成立させられる技術者」が常駐しているからこそ、制作現場の円滑な進行と圧倒的な作品品質が維持されているのです。