本作のバックボーンにあるのは、昭和の文豪・川端康成が紡ぎ出した名作『古都』の精神性だ。生き別れた双子の姉妹の数奇な運命と京都の四季の移ろいを端正な文体で描いた不朽の名作だが、本作はその古典的エッセンスを受け継ぎつつ、極めて現代的なヒューマンドラマへと再構築を遂げている。
西陣織や友禅染といった伝統文化の継承問題を軸に据えながら、旧弊な家父長制の残滓とグローバル資本の侵食が交差するスリリングな筋立て。美しき鴨川のせせらぎや嵯峨野の竹林は、登場人物たちが抱えるドロドロとした孤独と裏切りの舞台装置へと変貌する。伝統の継承か、それとも家柄の解体か。血のつながりゆえに逃れられない宿命の重みが、観客の倫理観を激しく揺さぶる。