多くの来館者が驚くのが、「なぜこれほど高密度な東京都渋谷公園通りギャラリー展覧会が、常時無料で開催されているのか」という疑問です。民間の企画ギャラリーであれば1,500円から2,000円前後の入場料が設定されても不思議ではない規模の展示が、なぜ誰でもフリーパスで入場できるのでしょうか。
その真相は、同館の運営母体と公的な政策目標にあります。この施設は、東京都の文化振興施策の一環として設置され、東京都現代美術館や東京ミッドタウン・デザインハブなどを運営する公益財団法人東京都歴史文化財団が東京都と連携して運営しています。単なる興行ビジネスとしてのアートではなく、以下の3つの公的ミッションを達成するために税金と公的リソースが投入されているのです。
- ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)の実現:障害の有無や国籍、年齢、経済的境遇に関わらず、すべての都民が等しく高度な文化芸術に触れられる機会を保障する。
- 多様性(ダイバーシティ)の理解促進:アール・ブリュット等の展示を通じて、異なる知覚世界や表現方法への共感を広げ、共生社会の土台を築く。
- 都市空間における文化結節点の創出:渋谷という若年層やインバウンドが集中する結節点に、敷居の極めて低い「文化のオアシス」を開設し、日常の中にアートを溶け込ませる。
つまり、東京都渋谷公園通りギャラリー入場料無料の理由とは、安売りのための無料ではなく、「あらゆる境界線を取り払い、誰もが排除されない文化空間を提供する」という明確な行政哲学に基づいているからに他なりません。