過酷を極めた闘病生活において、最大の支えとなったのは2010年に結婚した妻であり、フードスタイリストとして活躍していた大沢さとり氏の存在です。事故の一報を受けて病院へ駆けつけて以来、大沢氏は自身の仕事を大幅にセーブし、生活のすべてを夫の介護とリハビリ支援に捧げました。
長期にわたる入院生活を経て退院する際にも、大沢氏はケンタロウ氏が車椅子でストレスなく移動できるよう、住居の全面バリアフリー改修を決断。廊下の幅や水回りの段差解消、リハビリ器具の導入など、細部まで夫の導線に配慮した環境を整えました。訪問リハビリの理学療法士や言語聴覚士と連携しながら、日々の食事介助から発声訓練に至るまで根気強く寄り添い続けた姿は、医療従事者の間でも深い敬意をもって語られています。
また、ケンタロウ氏の料理の原点であり、偉大な母であった料理研究家の小林カツ代氏の存在も見逃せません。カツ代氏自身も2005年にくも膜下出血で倒れ、長年闘病生活を続けていました。2014年1月にカツ代氏が亡くなった際、ケンタロウ氏はリハビリの途上にあり、公の葬儀に参列することは叶いませんでした。しかし、母親譲りの「食べることは生きること」という強い信念が、ケンタロウ氏の折れそうな心を何度も奮い立たせる原動力となったことは想像に難くありません。