食物繊維が担う生体防御機能の中で、臨床現場から熱い視線が注がれているのが代謝改善と短鎖脂肪酸の産生です。食物繊維が血糖値上昇を抑えるメカニズムは、単に糖質の吸収をブロックするだけにとどまりません。
水溶性食物繊維が十二指腸から小腸を通過する際、粘り気のあるゲル状のネットワークを形成します。これが小腸粘膜の表面を覆うことで、炭水化物がブドウ糖に分解される速度を遅らせ、吸収を緩徐にします。食後血糖値の急上昇(グルコーススパイク)が抑えられ、インスリンの過剰分泌を防ぐことができます。さらに、朝食に食物繊維を豊富に摂取すると、昼食後の血糖値上昇まで抑え込まれる「セカンドミール効果」が科学的に証明されています。
もう一つの決定的な恩恵が、大腸に届いた水溶性食物繊維を腸内細菌が発酵分解するプロセスです。腸内フローラを改善する最新の食事法では、腸内細菌のエサとなる発酵性食物繊維の摂取が最重要視されています。ビフィズス菌や酪酸菌がこれらをエサにして、酢酸、プロピオン酸、そして「酪酸」などの短鎖脂肪酸を作り出します。
短鎖脂肪酸は腸内を弱酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑え込みます。同時に大腸粘膜のエネルギー源となって腸のバリア機能を修復し、全身の慢性炎症を鎮火させます。きのこ類や海藻類の腸活効果が際立っているのは、海藻に含まれるフコイダンやアルギン酸、きのこに含まれるβ-グルカンが、酪酸菌をはじめとする有用菌の極上のエサになるためです。