日本の食文化に深く根付いてきた中華料理。その中でも、濃厚な醤油味や甘みを特徴とする上海料理は、素材本来の旨味を引き出す蒸し物や煮込み料理に真骨頂がある。一方で、日本人が日常的に親しんできた町中華の親しみやすさも捨てがたい。
この店が傑出しているのは、本格的な中国郷土料理の伝統技術を土台に据えながら、どこか懐かしい大衆食堂の気安さを共存させている点だ。強火で一気に炒め上げるシャキシャキの青菜炒めから、数時間かけて旨味を凝縮させるスープまで、鍋肌の温度変化をミリ単位で見極める熟練の職人技が光る。気取らない佇まいでありながら、口に運んだ瞬間に広がる味の多層構造に、訪れた誰もが息をのむ。