西郷輝彦という表現者のスケールは、今の時代から振り返っても規格外だった。甘いマスクとダイナミックな歌唱力で一世を風靡した歌手時代から、骨太な演技派俳優へと脱皮を遂げた軌跡。その遺伝子は、ふたりの娘へ見事なまでに異なる形で受け継がれている。
長女の辺見えみりは、抜群のトーク力と親しみやすさでテレビ界を席巻したのち、大人の女性が支持するファッションやライフスタイルのオピニオンリーダーへと軸足を移した。一方、後妻との間に生まれた今川宇宙は、イラストレーター、舞台女優、執筆家としてサブカルチャーシーンで独自の立ち位置を築く。洗練された都会的なセンスと、アンダーグラウンドにも通じる濃密なアート性。一見すると対極に位置するふたりの表現領域だが、妥協を許さないものづくりへの執念には、確かに父の面影が重なる。