悲劇の引き金となったのは、場所前から抱えていた身体の異変だった。所属する片男波部屋での猛稽古の最中、強い腹痛を覚えながらも彼は土俵に立ち続けた。我慢強い性格で知られた玉の海は、痛みを隠して九月場所を駆け抜け、見事に15日全勝で幕内優勝を果たしたのだった。
しかし、場所後に病院へ駆け込んだ時には、病状はすでに深刻な段階に達していた。診断結果は急性虫垂炎。いわゆる盲腸炎であるが、放置された腹部はすでに腹膜炎を併発しかけており、即座に緊急手術が行われた。手術自体は成功し、術後の経過も良好に見えたことから、誰もが横綱の早期復帰を疑わなかった。