激しい立ち合いや組み合いの最中、さがりがポロリと抜け落ちる光景は日常茶飯事です。なぜあれほど簡単に落ちる構造になっているのでしょうか。
理由は極めてシンプルで、さがりは「廻しの前帯の内側に上から差し込んであるだけ」だからです。ピンで留めたり結びつけたりすることは一切禁じられています。立ち合いの衝撃や、相手の手が前ミツにかかった際の摩擦によって、簡単に抜け落ちる設計になっています。
「大事な装飾が落ちてしまって反則にならないのか?」と疑問に思う方も多いですが、さがりが落ちること自体は一切反則になりません。さがりはあくまで装飾・神事具であり、勝敗判定に直接影響を与える部位ではないため、取組は何事もなかったかのように続行されます。
ここで注目すべきが「行司の機敏な動き」です。落ちたさがりを力士が踏んでしまうと、足を取られて滑ったり、足首を捻挫したりする大怪我につながりかねません。そのため行司は、激しく動く両力士の攻防を邪魔しないよう絶妙なタイミングを見計らい、落ちたさがりを素早く拾い上げて土俵の外へ放り投げます。白熱の勝負の裏で行われる行司の職人技も見逃せない見どころです。