2000年代の日本のポップミュージックシーンにおいて、ヒップホップをお茶の間のメインストリームへと押し上げた立役者であるRIP SLYME。そのキャリア中期を象徴するシングルが、2007年7月25日にリリースされた通算13枚目のシングル『熱帯夜』です。「Coke+iTunes」の大型CMタイアップソングとして連日テレビでオンエアされ、オリコンチャート上位を記録するなど、夏の風物詩としての地位を決定づけました。
本作の誕生において極めて重要な鍵を握っていたのが、グループのサウンドプロデュースを一手に担うDJ FUMIYAの復活劇でした。当時、激務による体調不良(自律神経失調症)による一時休養から現場復帰を果たしたDJ FUMIYAは、それまでのポップで軽快なスタイルから一歩踏み込み、よりフロアライクで妖艶な大人のダンスミュージックを構築しました。当時の制作インタビューにおいてメンバーが「FUMIYAのトラックを聴いた瞬間に、これまでにない大人のエロティシズムを感じて鳥肌が立った」と回想している通り、まさにグループの音楽的成熟を告げるマスターピースとなったのです。
さらに音楽ファンの間で語り草となっているのが、大胆かつ精緻なサンプリング元ネタの手腕です。『熱帯夜』の印象的なストリングスリフと哀愁を帯びたメロディラインのベースとなっているのは、ビージーズのバリー・ギブが書き下ろし、1980年にバーブラ・ストライサンドが歌って世界的大ヒットを記録した名曲『Woman in Love』です。70〜80年代のディスコ/ポップスの名旋律を現代的なバウンスビートへと昇華させたDJ FUMIYAのサンプリング構築力は、現在もトラックメイカーの間で高く評価されています。