東洋医学において、思考過多や過度のストレスは消化吸収を司る「脾(ひ)」と、精神活動や循環を司る「心(しん)」を消耗させると考えられています。この状態は「心脾両虚(しんぴりょうきょ)」と呼ばれ、気(エネルギー)と血(栄養物質)が枯渇し、貧血傾向、気力の減退、不安感、浅い眠りといった症状が連鎖します。
加味帰脾湯は、ベースとなる12種類の生薬で胃腸を立て直して気血を補い(補気補血・健脾養心)、さらに熱を冷ます「柴胡(サイコ)」と「山梔子(サンシシ)」の2味を加えた計14種類の生薬で構成されています。この2つの生薬が加わることで、気血不足に加えて「イライラ」「のぼせ」「胸のつかえ」といった神経の高ぶりを鎮める作用(清熱疏肝)が生まれます。
自律神経系においては、交感神経の過剰な興奮を抑制し、副交感神経へのスムーズな切り替えをサポートします。「眠りたいのに些細な心配事が頭を巡って眠れない」「途中で何度も目が覚める」「朝起きても疲労感が抜けない」というタイプの不眠症に対して、西洋薬のベンゾジアゼピン系睡眠薬のように強制的に脳の活動を止めるのではなく、「自然に眠りへ入れる心身の土台を作る」のが本処方の本質的な効果です。