「豊多摩といえば私服」というイメージは広く定着していますが、そのルーツは1970年代初頭の生徒運動や教育改革論議に遡ります。生徒みずからが服装の自由化を勝ち取り、学校側もそれを「規律を押し付けるのではなく、個々人が自律を学ぶ契機」として認めた歴史があります。現在も標準服の指定はなく、生徒は日々の気候やTPOに合わせた私服で通学しています。
ネット上の評判や口コミでは「髪染めやピアスも自由で、派手な生徒ばかりなのでは」といった懸念が散見されますが、現場の様子は大きく異なります。行事や部活動、学習に熱中する素朴な生徒が大半であり、突飛なファッションで目立とうとする文化はありません。取材に応じた在校生の言葉がその実情を的確に表しています。
「最初の1か月は毎日の服選びに迷いましたが、すぐに慣れました。式典の日はジャケットを着るなど、自分たちで空気を読んで判断します。誰かが誰かの服装をとやかく言うことは一切なく、互いの個性を自然に認め合う雰囲気があります」(現役2年生・女子)
校則で縛るのではなく、「自分は何を着て、どう行動すべきか」を常に考えさせる環境は、生徒の精神的な成熟を促します。しかしこの自由は、裏を返せば「誰も手取り足取り指図してくれない」という自己管理の重圧と表裏一体です。