一死を報じられた生還者たちが語る「走馬灯」や「眩い光のトンネル」。オカルトや幻想と片付けられがちだったこれらの現象にも、明確な神経化学的メカニズムが見出されている。
脳が致命的な酸素不足(低酸素症)に陥ると、視覚野の活動が異常な同調現象を起こす。これが中央部から周囲へと広がる光の視覚体験をもたらす。同時に、死の苦痛を和らげるために脳内麻薬と呼ばれるエンドルフィンやセロトニン、さらには幻覚作用を持つDMT(ジメチルトリプタミン)が急速に分泌される。極限状態の脳は、自らを保護し、穏やかな死へと誘うための驚くべき緩衝システムを備えているのだ。