連載終了当時、インターネット掲示板やSNS上では「後半の展開が急ぎ足だった」「作者が結末を投げやりにして終わらせたのではないか」という打ち切り・挫折説が根強く囁かれました。しかし、関係者の証言や当時の制作背景を検証すると、全く異なる実態が浮かび上がります。
長期休載とタイトルの改変に隠された舞台裏
『20世紀少年』の第22巻をもって連載が一時中断し、約1年のブランクを経て『21世紀少年』として再始動した背景には、浦沢直樹自身の深刻な肩の故障(腱鞘炎・脱臼)と、膨大に広がりすぎた伏線を完璧に回収するための構成再設計期間が必要だったという事実があります。
浦沢直樹は当時のインタビューにおいて、「20世紀の物語を20世紀のうちに終わらせるはずが、描き進めるうちにキャラクター自身が勝手に動き出し、予定調和の結末を拒んだ」と述懐しています。編集部による打ち切りではなく、むしろ作者自身が納得のいく結末を描き切るために選んだ独立タイトル化でした。
「カツマタ君は後付け」という誤解の検証
読者の間で「カツマタ君という唐突なキャラクターが急に出てきた」と言われることがありますが、これも伏線を精読すると誤解であることが分かります。
物語の極めて初期(第4巻や第10巻周辺)から、「理科の実験の前日に死んだカツマタ君の幽霊」「フナの解剖を楽しみにしていた少年」「首吊り坂の屋敷でお面を被っていたもう一人の子供」といった形で、幾重にも布石が打たれていました。浦沢直樹の綿密なプロットワークは、最初から「名前を奪われたもう一人の少年」の存在を指し示していたのです。